陶芸でやる作業の中でも特に大変な作業のひとつ。
それは、ガチガチに固まった釉薬を混ぜることです。力を入れても、なかなかキレイに混ざりません。
それから、冬は水道の水以上にキンキンに冷えています。手が痛い!。
そんな釉薬をなるべく早く混ぜる方法を紹介します。
2022/ 4
先丸の左官コテを試したら便利でした。
突きが強すぎるとバケツがえぐれます。
【陶芸のプロが教える】固まった釉薬を早く混ぜる方法
釉薬の水分を減らして混ぜる
自分で調合した釉薬(織部釉、石50:灰50)です。しばらく使わなかったので、底にたまってガチガチに固まっていますね。
釉薬の内容は、主に石と灰です。石が多いほど重さで底に沈みます。
長石の多い志野釉は特に沈むのが早い。
また、粒が非常に小さく強く固まります。
市販の釉薬は固まりにくく調整してあるようですね。
スコップを思いっきり差し込んでも、底まで進みません。
ヘラでひっかいても、簡単にはがれないです。
釉薬の容器と同じ大きさのものを用意しました。
ある程度、大きいほうがいいでしょう。
釉薬の水分を空の容器へ移します。
このくらいです。
水分を減らした状態でつかんでみると、さっきよりもラクにはがすことができます。
ふつうは素手でやるみたいですが、寒いので手袋をしています。
同じ容器に水を足してしまうと、また固まります。
少しずつつかんで……。
水分を移した容器へ。あとは、力任せでキレイに混ぜることができます。
水分が少ないと粘りが出てくるので、水を追加。
ある程度、サラサラになったら「工業用のかくはん機」も使えます。
試しに、ガチガチの状態でかくはん機を使ってみましたが、ほとんど混ざりませんでした。
一定の回転速度でロックできます。
粘土再生にもかくはん機を使っています。
そもそも釉薬を固まりにくくしたいならベントナイトを混ぜる方法もあります。
ベントナイトが、歯磨き粉にも入っているものも見かけます。
ニガリ(マグネシウム)を加える方法もあるようです。
釉薬の成分も当然変わります。
その他、石を少な目に調合する。
定期的に混ぜる。釉薬を小分けにしておく。釉薬の底にロープを沈めておくなど。
釉薬の水分調整です。
一日くらい放っておけば、粉と水が別れます。
水だけひしゃくで汲むか、容器を傾けてこぼしましょう。
釉薬は、ボーメ計で濃さを測っておくと安心です。
ふつうは、ボーメ40〜50くらい。厚さはハガキ1枚分。
素焼きの欠片でテストしましょう。慣れてきたら感覚でどうぞ。
ペットボトルなどの細長い容器に移してから測っています。
短めの方が使いやすいです。長いタイプだとボーメ計が底に当たって正しく測れません。
容器の底でスクリューが常に回転している、かき混ぜ装置が欲しくなりますね。
釉薬がそれほど固くない場合
釉掛けのときにダマが少しでも残っていると器にでっぱりができる原因になります。
釉薬ごとに予備にバケツを用意して、水分を移動。底にたまった釉薬はスプーンなどで削り取りましょう。
あとはヒシャクでかき混ぜながら釉掛け。
1番楽なのは撹拌機。釉薬を柔らかく調節しておきましょう。
釉薬を手塗りするなら楽
鳴海織部の豆皿です。
これは釉薬を筆で塗っています。手塗り。
まず赤楽で塗って、鉄で青海波とラインと枠を描いています。赤楽を塗っていないライン模様は白く見えますね。
そのあとに絵の上だけに長石釉を塗る。
残りの部分に織部釉を塗り、鉄多めの釉薬を筆で散らしています。
手塗の場合、釉薬は少量で済みます。
ただし手間はかかりますね。
一気にジャポンと釉薬をかけるズブ掛けの10倍、絵柄によってはもっと時間がかかります。
それからムラは多く現れますし、素地が見える部分も出ます。
また、撥水剤を使えば楽に色分けできますが溶剤のニオイがきつい! 長時間扱うとめまいがします。
釉薬の手塗りは繊細な作風の方には向かない方法です。